嚥下障害患者さんへの食事には、トロミをつけたり、ゼラチンや寒天で食材を固めたりしてテクスチャーを調整することがよくあります。テクスチャーを調整するための食品にはいくつかの種類がありますが、患者さんの状態、調理の形態、そしてそれぞれのテクスチャー調整食品の特徴をよく理解して使い分けることが必要です。
片栗粉 | ジャガイモの澱粉が多く使われる。水で溶いてトロミをつけるが、必ず煮たてることが必要。時間の経過や温度変化により離水する。 |
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葛粉 | 片栗粉と比較するとやや割高であるが、安定したトロミがつく。片栗粉と同様に加熱が必要。 |
コーンスターチ | とうもろこし澱粉。片栗粉と同様に使う。 |
小麦粉 | 溶かしバターと1対1で炒めて、スープやグラタンに使う。 |
増粘剤 | でんぷん、加工でんぷん、デキストリン、ガム等の食物繊維などで出来ている。熱い物や冷たい物に関係なく、混ぜるだけでトロミを付けることができる。加熱は不要。 |
水分など咽頭への送り込みのスピードが早い食材を摂取する場合、トロミを付けることにより食材のスピードをコントロールすることで、食材を食道へと送り込むことがしやすくなります。また、食材を細かく刻んだ場合にも、汁気とトロミを加えることで、随分と食べやすくなります。しかし、トロミをつけすぎるとベタベタ感が強くなり食感を損なうだけでなく、かえって嚥下し辛くなってしまうので注意が必要です。トロミを付けるための材料としていくつかの食品がありますから、それぞれの特徴をよく理解して使い分けることが必要です。
マヨネーズ | 刻んだり潰したりした食物に、まとまりや滑らかさを付けたい時に便利。 |
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生クリーム | マッシュ状の食品に軟らかさ、滑らかさを足したい時に使用。 |
油脂 | サラダ油、バター、マーガリン等を混ぜることにより、食品の滑りがよくなります。 |
増粘剤とは、混ぜるだけでトロミを付けることのできる、でんぷんを主原料にした食品です。
長所 | 短所 |
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各メーカーから、販売されている各種増粘剤。 一袋2g〜8g入り。 このようなパッケージの他にも、大袋入りや、缶入りも販売されている。 |
ゼラチン | 動物の骨や皮のコラーゲンで体温で溶け、消化、吸収される。そのなめらかなゼリーは経口摂取開始時によく使われる。 |
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寒天 | 紅藻類、てんぐさ、おごのりなど植物由来の素材。腰を弱くしたもの等色々な種類がある。使う量や固める素材によっては、嚥下障害が重症でなければ良いようである。 |
カラギーナン | 紅藻類、つのまた、すぎのりが原料。嚥下障害食にも使われている。他のゲル化剤との混合により程よいテクスチャーを調節できる。 |
ペクチン | 果汁搾汁かす、柑橘類の果皮から作られる。弾力がありなめらかであるが、使う量や固める素材によって調整する。障害が重たくなければ使える。 |
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寒天 | カラギーナン | ゼラチン | ペクチン | |
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原料 | 海藻(天草・オゴノリ) | 海藻(スギノリ・キリンサイ) | 牛・豚の骨や皮 | 柑橘類の果皮 |
主成分 | ガラクトース 3.6-アンヒドロガラクトース |
ガラクトース 3.6-アンヒドロガラクトース |
ゼラチン蛋白 | ガラクツロン酸メチルエステル |
形状 | 粉末状、棒状 フレーク状、糸状 |
粉末状 | 粉末状、板状 | 粉末状、液状 |
ゲルの性状 | 固いさくいゲルを作る。トコロテン用の粘弾性に富むゲルもできる。 | κタイプはさくいゲルを作る。ιタイプは軟らかいゲルを作る。 | 軟らかい粘りのあるゲルを作る。 | 糖、酸との結合により弾力のあるゲルを作る。 |
分散性 | 水に容易に分散 | 砂糖と粉混合必要 | 水に膨潤させる | 砂糖と粉混合必要(粉末) ペクチン液とカルシウム液を混合 |
溶解性 | 煮沸溶解。溶解性のよい易容性寒天もある。 | 80℃以上の熱湯に溶解。 | 50〜60℃の湯に溶解。 | 煮沸溶解。 |
凝固温度 | 35℃〜45℃ | 30℃〜75℃ | 18℃〜20℃ | 65℃〜85℃ |
熱可逆性 | 再溶解可能 (80℃〜100℃) |
再加熱可能 凝固温度+5〜10℃ |
再加熱可能 熱劣化注意 |
再加熱可能 凝固力低下する |
耐熱性 | あり | あり(高温やや弱) | なし | あり |
耐酸性 | 弱(使用方法により酸性で使用可) | 弱(使用方法により酸性で使用可) | 弱(使用方法により酸性で使用可) | 強(pH2.5〜3.8でゲル化) |
冷凍解凍復元性 | よくない | 一部よい | よくない | 高糖度ゲルよい |
耐酸素性 | あり | あり | なし | なし |
使用濃度 | 0.1〜1.2% | 0.3〜1.0% | 2〜4% | 0.3%以上 |
食品添加物表示 | 食品 | 食品添加物 | 食品 | 食品添加物 |
ゲル化剤として、最も使われる頻度の高いゼラチンと寒天との比較
ゼラチン | 寒天 |
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イナゲルN-65は、ゼラチン、寒天、両方の特徴を併せ持ったゲル化剤です。
ゼラチンに似た軟らかさ、弾性、変形しやすさを持ちながら、温度による変化を受けにくく、形状の変化が少ないのが特徴です。