◆平成17年12月11日(日)に実施しました、長崎嚥下リハビリテーション研究会主催 嚥下障害指導者認定試験の解答です。
選択問題50点満点、記述式問題50点満点とし、合計70点以上を合格とします。
[全50問 1問1点 50点満点]
問 | 問1 | 問2 | 問3 | 問4 | 問5 | 問6 | 問7 | 問8 | 問9 | 問10 |
解答 | 2 | 1、4 | 1、3、5 | 1、2、3 | 3 | 5 | 1 | 4 | 5 | 5 |
正解率 | 85% | 90% | 90% | 90% | 85% | 90% | 60% | 10% | 90% | 50% |
問 | 問11 | 問12 | 問13 | 問14 | 問15 | 問16 | 問17 | 問18 | 問19 | 問20 |
解答 | 2 | 1 | 5 | 2、3、4 | 1、2、3 | 1、2 | 2、3 | 1、2、5 | 4 | 1、3、4 |
正解率 | 85% | 75% | 85% | 90% | 80% | 100% | 90% | 65% | 90% | 85% |
問 | 問21 | 問22 | 問23 | 問24 | 問25 | 問26 | 問27 | 問28 | 問29 | 問30 |
解答 | 1、2、3 | d | c | b | c | b | d | c | c、d | b |
正解率 | 65% | 30% | 55% | 55% | 35% | 75% | 50% | 75% | 5% | 60% |
問 | 問31 | 問32 | 問33 | 問34 | 問35 | 問36 | 問37 | 問38 | 問39 | 問40 |
解答 | e | オ | ウ | ア | イ | オ | b | e | b、d | b |
正解率 | 95% | 35% | 100% | 70% | 55% | 35% | 40% | 80% | 60% | 35% |
問 | 問41 | 問42 | 問43 | 問44 | 問45 | 問46 | 問47 | 問48 | 問49 | 問50 |
解答 | b | a | e | e | b | a | a、b | b、d、e | c、e | a、c、e |
正解率 | 70% | 55% | 95% | 90% | 85% | 95% | 85% | 45% | 85% | 40% |
[全12問中5問選択 1問10点 50点満点]
嚥下障害の発見の糸口になる徴候として以下の症状が考えられる。
・流涎(りゅうぜん)(よだれ)
・食事中のむせ、セキ込み
・喉に食べ物が引っかかる感じ
・食後の嗄声(させい)
・飲み込むのに時間がかかる(嚥下開始の遅れ)
・鼻への逆流(鼻漏出)
・食事時間の延長
・食事摂取量の減少
・嗜好の変化
・口腔内に食物が残る
・肺炎(または熱発)を繰り返す
また、誤嚥性肺炎・窒息・脱水などの既往歴の有無、発語の明瞭度、意識状態、認知症の有無、口腔ケアの際の口腔内の状況などの情報収集も重要。
嚥下の比較的素早い動きをX線透視装置を用いてビデオ撮影する検査でVFともいう。硫酸バリウム等の造影剤が入った各種模擬食品を患者に飲み込んでもらい、嚥下に関わる器官の動きを見る。誤嚥の同定・不顕性誤嚥の発見・効果的な食事の姿勢や嚥下の方法・適切な一口量・嚥下しやすい食物形態の選択に役立てる。VFによる誤嚥の分類は、(1)嚥下反射が誘発される前に誤嚥する嚥下前誤嚥、(2)嚥下中に誤嚥する嚥下中誤嚥、(3)嚥下後、口腔・咽頭の残留物を誤嚥する嚥下後誤嚥に分けられる。
嚥下機能、口腔機能の低下により口腔の自浄作用が低下し、口腔環境の悪化をきたしている場合が多い。
口腔の状態としては、(1)歯垢付着、(2)う蝕の進行、(3)歯肉の炎症、(4)口臭、(5)舌苔、(6)食物残渣、(7)舌背、口蓋、咽頭への痰の付着、(8)口腔乾燥などがよくみられ、(9)口腔過敏、(10)開口障害、閉口障害をきたしている場合もある。
全身状態としては、(1)肺炎、熱発、を繰り返す、(2)経管栄養のため口腔を使う機会が少ない、(3)ADLの低下、(4)意識レベルの低下、(5)低栄養、(6)脱水、(7)褥創があるなどが考えられる。
歯ブラシ、舌ブラシ、スポンジブラシなど、患者の口腔内状況に見合った用具を用い、機械的に口腔内の歯牙及び粘膜を清掃するとともに、水分を使って付着物を洗い流す。水分を用いる際、誤嚥には十分注意する。口腔ケアの回数は出来るだけ多くする。イソジンを用いて清拭を行なうだけでは、口腔ケアの効果は得られない。また、口腔ケアを行なうにあたっては、食物残渣の有無と付着部位、痰の付着、口腔乾燥、舌苔、義歯装着の有無など口腔内の観察を忘れてはならない。
経口摂取を行なっていない患者に対しては、口腔機能の廃用を防ぐという意味からも、リハビリという観点で口腔ケアを積極的に行なう必要がある。
脳挫傷や脳出血などにより意識障害を来している場合や、痴呆症(認知症)、うつ病などの意欲低下を来す疾患では、先行期に問題あり、経口摂取が進まない。
疼痛性疾病を合併している時も同様である。また、胃潰瘍など消化器疾患に罹患しているときも摂取が進まなくなる。
(1)胃排出機能の低下 (2)GER(胃食道逆流)、誤嚥性肺炎 (3)下痢 (4)腹痛、腹部膨満 (5)便秘 (6)嘔吐 (7)カテーテル(ボタン)の抜去、脱落 (8)バンパーの埋没 (9)カテーテルの位置移動、閉塞 (10)瘻孔からの栄養剤や胃液の漏れ (11)肉芽腫
栄養剤の投与速度を遅くする。濃度をあげ、投与量を減らす。エリスロマイシンなど、胃排出機能を高める薬剤を投与する。
投与終了後、1時間程度座位を保持する。栄養剤を人肌程度に温め、時間をかけて注入する。
栄養剤の固形化を図る。(ペクチンなどの利用)
栄養剤の注入前にガス抜きをおこなう。 ガーゼを頻回に交換する
カテーテルの固定法を少しずつ変更する。肉芽腫になる前に原因を除去する。
誤嚥とは、本来食道へ行くべき飲食物が誤って気管へ入ること、誤飲とは食物でないもの(ボタン、タバコ、電池など)を誤って飲み込むことをいう。
嚥下の咽頭期には、喉頭が前上方に挙上し、咽頭に存在する食物塊と空気、半固形物と空気がまざったもの、液体と空気の混合物などが、狭い食道入口部に向かって移動し嚥下される。いわば「スクイーズ」の状態となる。その際、狭い食道に向かってこれらが押し込まれるので「ゴックン」と音が出る。
(参考)gulp
動詞:ごくごく飲む、ごっくんと飲む
名詞:ごくごく飲むこと、ごっくんと飲むこと
ビールを一杯ぐっと飲む、ごっくんと飲む、ごっくんと飲み下す
--gulp down a glass of beer--
(参考)gurgle
動詞:(のどなどを)ごろごろ鳴らす
名詞:「ゴックン」という音、(参考)イソジン・ガーグル
(参考)gobble
動詞(1)がつがつ食べる、むさぼり食う= 食べる音から
動詞(2):人が、ガラガラ声で話す
名詞:七面鳥の鳴き声
・嚥下反射の調節に関与する神経機構
口腔・咽頭に入った食塊は感覚神経(求心性神経)を経て延髄にある嚥下中枢に刺激が伝わり、延髄からの嚥下運動を起こさせる指令がでて嚥下各器官が動きいわゆる「ゴックン」という運動が起こる。これを一般的に反射性嚥下というが、この反射性嚥下に対して上位中枢の大脳皮質は促進系に働き網様体は促進したり抑制したりしている。
球麻痺とは、延髄の嚥下中枢が障害を受けた時に起こるもので延髄の感覚入力の理解も出力としての運動も起こせないために「ごっくん」すら起こらないという状態である。仮性球麻痺とは延髄の嚥下中枢より上位の神経が障害を受けた状態である。嚥下反射は残存しているので「ごっくん」は起こるが、大脳皮質からの促進経路が働かないためにタイミングのよいゴックンが起こりにくい状態である。また仮性球麻痺には失行・失認・失語などの脳高次機能障害やパーキンソン症状などの神経学的異常が伴いやすい。これが嚥下障害の改善に大きく障害となることもある。
a)脳幹梗塞・出血:脳幹部である橋や延髄などの嚥下機能に関与する部位が直撃される場合は、球麻痺の状態であり、嚥下機能障害は永続し、回復は非常に困難。意識障害を伴うことが多い。
b)中脳以上の脳血管障害:嚥下障害は「仮性球麻痺」の形であらわれ、比較的軽く、嚥下機能回復が見込める。固形食物の嚥下より液体の嚥下のほうが不良となる。軟口蓋反射は早期から消失する。
c)大脳基底核の小梗塞(ラクナ)では下記の無動タイプの嚥下障害がみられ、一部の症例では抗パーキンソン剤やアンギオテンシン変換酵素阻害剤が奏功することがある。
a)嚥下機能に関与する脳幹部の神経系や咽頭喉頭部の筋を直接障害し、球麻痺の形で嚥下障害、誤嚥を引き起こす。固形食物が先に嚥下しにくくなり、嚥下障害の程度はより重篤。基礎疾患によってはその回復により嚥下機能が軽快することもある。
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・重症筋無力症
・多発性筋炎
・筋ジストロフィ症
・延髄空洞症
・橋・延髄腫瘍
b)パーキンソン病および関連疾患:無動の一環として嚥下障害がみられる。L-DOPAなどの抗パーキンソン剤が奏功することがある。
(井手 芳彦 神経内科医)
脳卒中による嚥下障害と神経疾患での嚥下障害での一番の違いは、非進行性か進行性かである。非進行性では病気がおこったときがたいへん悪い状態で今後は何とか自然回復も加味しながらの嚥下訓練が効を奏する可能性は高い。しかし進行性である嚥下障害は病気のステージに応じた栄養管理を行わなければならないので嚥下訓練の効果を発揮する期間(時間)は短期間であることが一般的である。
(本多 知行 リハ医)