咽喉頭異常感症（心因性嚥下障害）
咽喉頭異常感症（心因性嚥下障害）とは
嚥下障害、嚥下困難、咽喉頭異常感は同義語に使われることもあるようです。
咽喉頭異常感とは、咽頭に異物感があるが嚥下には支障がない場合をいい、心理的要因が大きく関与していると言われます。しかし、心理的要因で真の意味での嚥下障害が生じることはまれです。
咽喉頭異常感症の症状としては、のどに異物感はあるが食事摂取の際に嚥下困難はなく、唾液を飲込む時に異物感が強くなるということです。咽喉頭異常感は異物感はあるが嚥下には問題がないことが特徴とされますが、患者の初診時の訴えは嚥下障害のそれと変わらないことが多いので注意が必要です。急性、一過性の嚥下障害、ある状況でだけ、あるいはあるものに対してだけ出現する嚥下障害には心因性のものが多いと言われます。
東大分院耳鼻科では、耳鼻科一般外来患者の初診患者のうち咽喉頭異常感を主訴としたケースは１０％でしたが、そのうち２７％は器質的所見を見出せず、心理的要因の関与が大きいといえるケースであったという報告があります。
咽喉頭異常感症の定義（1995年7月 診療指針）
「患者が咽喉頭に異常感を訴えるが、通常の耳鼻科的視診によっては、訴えに見合うような器質的病変を局所に認めないもの」
咽喉頭部の異常感を訴えて耳鼻科外来を受診する患者は少なくなく、その数も年々増加傾向にあります。また患者の訴え方一つをとっても“つまった感じ”“脹れている感じ”“ひっかかる感じ”“イガイがした感じ”“圧迫される感じ”“飲込みづらい”“息苦しい”など多様です。そしてその原因は、(1)局所的要因、(2)全身的要因、(3)心因的要因に大別されます。
(1)局所的要因
慢性炎症、副鼻腔炎、咽喉頭炎、扁桃炎、食道炎、
特殊な炎症：真菌炎、
増殖・肥大：舌根扁桃肥大、口蓋扁桃肥大
形態異常：茎状突起過長、口蓋垂過長、食道憩室
頚椎異常：頚椎骨棘形成、頚椎湾曲
腫瘍・腫瘤：咽喉頭食道の嚢胞やポリープ、ガン
甲状腺異常：甲状腺腫、橋本病、甲状腺ガン
その他：咽頭アレルギー、唾液分泌異常、口腔乾燥症、咽喉頭異物、鼻閉（口呼吸）
(2)全身的要因
貧血、Plummer-Vinson症候群、更年期障害、糖尿病、胃腸疾患、胃下垂、薬物の副作用
(3)心理的要因
ガン不安、神経症、心身症、ヒステリー、精神病
（出典：JOHNS vol.8 no.12 1992 及び耳鼻と臨床 46巻2号 2000）
対処法
(1)嚥下造影で確認 (2)全身的要因について確認
以上で問題点がなければ、
(3)インフォームドコンセントとして
- 嚥下と飲込みの関係を、得られた情報で説明
- 造影剤を飲込めたことで嚥下は可能と自信をつける
- 腹式呼吸を訓練
- 言語療法士とともにプリンなどを一緒に食べる
- 次第に硬い物に移行してみる
- 普通の食事のスピードにしていく
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お願い |
咽喉頭異常感スコア（問診表を含む）
■1.あなたののどの異常な感じは次のどれに近いですか、○をつけてください。
（どちらかわからないときは２つ以内で選んでください）
0. 全く気にならない ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 0.0
1. ごくたまにノドの奥にからんだ感じがする・・・・・・・・・・・・・・・ 2.0
2. 時々ノドの奥がムズムズする ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.9
3. 朝起きた時ノドにイガイがする感じがある ・・・・・・・・・・・・・ 3.2
4. 飲んだ薬がひっかかった時のような感じである ・・・・・・・・・ 3.8
5. いつもノドの奥がかゆい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.1
6. ツバを飲込む時にひっかかる感じがする ・・・・・・・・・・・・・ 4.6
7. ノドのどこかに何かが貼り付いている気がする ・・・・・・・・・ 5.1
8. ノドにあめ玉がひっかかっているような気がする ・・・・・・・・ 5.5
9. ノドに骨がささってその周りが腫れているような気がする ・・ 6.3
10. ノドの奥に大きな塊りがあるようだ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.8
11. ノドを手でしめつけられているとうな感じがある ・・・・・・・・・ 7.1
12. ノドがつまって食物も水も全く通らないような感じがする ・・ 8.2
■2.
1. このような感じがおこったのは今度が初めてですか （ はい ・ いいえ ）
2. いつごろから感じはじめましたか （ ）
3. この感じは何かの拍子に、ある日急に始まりましたか （ はい ・ いいえ）
4. それ以来ずっと治らずに続いていますか （ はい ・ いいえ ）
5. 時々感じなくなることがありますか （ はい ・ いいえ ）
6. この感じがはじまる頃風邪をひいていましたか （ はい ・ いいえ ）
7. ■２−１で「いいえ」と答えた人だけ答えて下さい。
前にあったのはいつ頃ですか （ ）
それはいつ頃治りましたか （ ）
前のも今度と同じような感じでしたか （ はい ・ いいえ ）
その時はどんな治療をしましたか （ ）
8. この異常感で他の医院病院でみてもらいましたか （ はい ・ いいえ ）
そこでどう言われましたか （ ）
■3.
1. 食物を飲込む時にどこかにひっかかる感じがしますか （ はい ・ いいえ ）
2. 水を飲む時にひっかかる感じがしますか （ はい ・ いいえ ）
3. 唾を空飲みする時にひっかかる感じがしますか （ はい ・ いいえ ）
4. 食物を飲込む時にチクッと痛みがありますか （ はい ・ いいえ ）
5. 忙しい時や何かに集中している時は忘れていますか （ はい ・ いいえ ）
6. 呼吸がしにくいと思ったことがありますか （ はい ・ いいえ ）
7. 前と比べて声がおかしくなったと思いますか （ はい ・ いいえ ）
8. あなたはノドの診察をされるのは苦手ですか （ はい ・ いいえ ）
9. あなたはひと息で5秒以上続けてうがいができますか （ はい ・ いいえ ）
10.歯をみがく時にすぐ吐き気がしますか （ はい ・ いいえ ）
11.あなたは泳げますか （ はい ・ いいえ ）
■4.
1. あなたの知人や身近の人でガンにかかった人がありますか （ はい ・ いいえ ）
2. それはノドのガンですか （ はい ・ いいえ ）
3. その話を聞いてからノドがおかしくなったのですか （ はい ・ いいえ ）
4. その人もあなたと同じようにノドがおかしいと言っていましたか
（ はい ・ いいえ ・ わからない ）
■5.以前かかったことのある病気に○をつけて下さい。
（現在治療中のものも含めて下さい）
鼻の病気 胃腸の病気 甲状腺の病気 貧血
その他 （ ）
■6.女性の方のみ答えてください
生理は順調ですか ・はい → 質問は終わりです
・いいえ
↓
生理は終わりましたか ・はい→（ 歳頃）
・いいえ
↓
婦人科の手術をしたことがありますか ・はい→（ 歳 の手術）
・いいえ
↓
不順なのは若いときからですか ・はい
・いいえ（ 歳頃から）
■7.あなたの“ノドの異常感”がおこった時の状況について質問します。
異常感はなにかきっかけがあっておこることが多く、異常感の原因を知る手がかりにな
ります。あなたのノドの異常感がおこった時のことをよく思い出して答えて下さい。
1. ノドの異常感は（ ）年（ ）月（ ）日から始まった。
2. あてはまるものに○をつけて下さい。
(1) ノドの症状は（ a. 急に始まった b. 除々に始まった）
(2) ノドの症状は（ a. 常にある b. 時々ある c. 忘れているときもある）
(3) ノドの症状は
（ a. ひどくなってきている b. 同じである c. 良くなってきている d. 変動する）
3. ノドの異常感がおこった時、何かきっかけがなかったですか。思い当たる物があれば○を
つけてください。
1. 風邪をひいていた
2. ノドが痛かった
3. 扁桃腺がはれていた
4. 咳や痰がでていた
5. 鼻汁がノドに流れていた
6. 鼻アレルギーの症状がでていた
7. 錠剤やカプセルがひっかかった
8. 熱いお茶や料理を食べた
9. 固い物（フランスパン等）を食べた
10. 魚の骨がひっかかった
11. 胃カメラをうけた
12. 手術をうけた
13. 刺激のある空気（洗剤、線香、スプレー等）を吸った
14. タバコを多く吸った
15. 胃の調子が悪かった
16. 胸やけがしていた
17. げっぷが多かった
18. マスコミの記事を読んだ
19. 知人がノドの病気になった
20. 過労であった
21. 睡眠不足であった
22. 肩のこるようなことをした
23. 心配事や不愉快なことがあった
24. その他（具体的に書いてください）
（ ）
25. 思い当たるようなきっかけがない
出典 ： 蔦 佳明、咽喉頭異常感症、クリニカ Vol.26 Ｎｏ.3 1999
＊このスコア表は、咽喉頭異常感を診断するものではありません。
ご自分で該当する項目にチェックをし、耳鼻咽喉科等を受診されることをお薦めします。